【ルーツVol.12】職業:経営者|今井 紀明|認定NPO法人D×P (ディーピー)理事長

投稿者: | 2019年11月7日

今回は通信制高校や定時制高校に通う高校生に特化してサポートを行う認定NPO法人D×P (ディーピー)理事長の今井 紀明さんにお話を伺いました。このたび、嬉しいご縁をいただき、弊社の新オフィス内に併設というカタチでオープンする「D×P図書館」への期待、若者支援への熱い思いに迫りました。

 

「図書館」だったら、本好きな子の「場所」になり得るかなと。

 

松本(以下:松):D×Pさんとして、いろいろな「場所」をつくる活動をされていらっしゃいますが、図書館としては今回の「D×P図書館」が初の試みですか?

 

今井(以下:今):そうですね。D×Pのメイン事業である通信制高校・定時制高校内での授業のほかに、食事をしながら相談できるカフェや、進路相談室のような「場所」づくりも行っています。今回の「D×P図書館」も、そのひとつなんです。

 

松:そうなんですね。「図書館」っていうカタチは、我々も面白いなと思っていて。元々ここに移転する前、リノベーションをする前からたくさんの本を置きたいっていう構想を持っていたんです。

本だけでなくクリエイティブ関連の資料やサンプルなんかも置けば、従業員やクライアントはもちろん、ここに来る子どもたちや地域の人たちなど、さまざまな人が集ったり、つながったり…。いろいろなものが生まれる創造的な空間にできるんじゃないかな、と思っていたので。
ちなみに、今井さんご自身は新しい「場所」づくりになぜ「図書館」という形態を選んだんですか?

 

今:学校に行っていない子とか、特に通信制高校に通っている子、って、実は本好きな子が多いんですよ。そんな子たちが、きっと図書館だったら来てくれるんじゃないかなと。しかも、通信制高校ってキャンパスに行く回数が限られているので、自分の時間に余裕がある子もたくさんいるんですよね。空いた時間に本を読みに来てくれたらいいなあって。だから、ホームページにも「新しくこんな本が入ったよ」「こんなデザイン系の本があるよ」とか本の情報を載せたら、本好きな子たちも喜ぶんじゃないかな、と。今パッと(JAMSTOREの本棚を)見ただけでも、面白そうな本がいっぱいありますよね。

松:例えばこの本なんかは、もう廃盤になっているんですが、私が(20年以上前…)ライターになった時、先輩からお勧めされた本で…(笑)。

ほかにもリノベーション関連の本とか、コモンカフェの本とか、いろいろありますよ。

 

今:うんうん。そういうクリエイティブ系の本に惹かれる子ってきっと多いだろうなと。そんな若者たちの「場所」になれば、というのが今回「D×P図書館」をオープンしようと思った大きな理由ですね。

 

一人ひとりに合う「場所」をつくりたい。

 

松:若者たちの目線に立って、彼らが好きな要素で「場所」づくりを考えるって素敵ですね。

 

今:僕ら世代だと、例えば「ゲームが好き」「音楽が好き」「アニメが好き」って大きなくくりのコミュニティーだったんですよ。でも今の10代の子たちって音楽でも、ゲームでも、アニメでも、そのなかでバラバラに分かれていて、僕たちの世代と比べると、さらにコミュニティーが細分化されているんです。だからこそ「場所」も細分化することでピンポイントの子に響いて、ここに来てくれるようになるかな、と。

松:そうか~。カフェが合う子もいるし、図書館が合う子もいるし、それぞれですもんね。若者たちのどこがツボで、どこでグッと上がってくるか、なんて人それぞれ分からないですもんね。

 

今:そうそうそう。D×Pとしては、高校生一人ひとりに合う「場所」があると、すごくいいなと考えています。高校生とか10代の子たちが集まれる「場所」をつくりたい。そういう思いでずっとやってきました。

 

松:「場所」づくりをする時、今井さんが心がけていることって何かありますか?

 

今:まず良い空間であるかどうか、これは重要だと思っています。JAMSTOREさんのオフィスがDIY真っ最中だった時、見学させてもらいましたよね。あの時「あ、なんか良さそうだな、ここの空間もいい感じになるんだろうな」って感じたんですよね。

 

松:ありがとうございます。嬉しいです(笑)。
ちなみに、今井さんが今おっしゃった「良い空間である条件」って何でしょう?

 

今:結局のところ、一番大切なのは、そこの場所にいる「人」なんですよ。「人」が大きな価値を見いだしていると思っています。

D×Pは「否定せずに関わる」ことを大切にしている組織です。JAMSTOREさんなら、年齢を問わず幅広い年代の苦楽も学べる、さらに「否定せずに関わる」というD×Pの価値観とも合う、そう感じたのは大きいですね。

※写真)11月5日より開放したD×P図書館@JAMSTORE風景
※参照)ブログ記事「D✕P図書館@JAMSTORE,本日より開放いたします」

 

松:「否定せずに関わる」かあ…。それって、若者と向き合う上で、いや誰と向き合う上でも大切なことだと思います。D×Pさんのスタッフさんって、やっぱりそんな今井さんの考え方に共感されていると思うんですが、どんな方が働かれてるんでしょうか?

 

今:20代中盤から30代後半のスタッフが活躍しています。前職の経験もさまざまですね。ありがたいことに、今期で8年目に突入しましたが、僕が誘って入社したスタッフもたくさんいますし、理念に共感したというスタッフも多いですね。

 

松:8年目ですか…!すごいことですよね。寄付だけ成り立っているのではなく、収益もしっかり得られて継続されている。私の中にあったNPO法人に対する概念が覆されました。もちろん一概には言えないんですが「NPO法人=自己犠牲の下に成り立っている組織が多い」という印象だったんですけど、D×Pさんには「犠牲」がない。むしろ全然充実している!っていう事実に、正直驚かされました。

 

今:NPO法人といっても、スタッフへ給与を払わないといけないし、採用も必要ですしね。出資が受けられないとか、資金調達の方法が限られるとか、株式会社との違いはありますが、経営する会社でもNPO法人でも、基本は同じなんですよ。一応頑張ってますね(笑)。

 

松:NPO法人も「法人」ですからね。ビジネスとして潤わないと、守るべき人も守れないんだよっていうのは、綺麗ごとじゃなくて、若者にとってもすごく大切な学びですよね。
私の世代っていわゆる「終身雇用」「高度成長期」の真っ只中で頑張る両親から育てられて、ビジネスとは何ぞや?なんて誰にも教えてもらっていない。でも、それって当然といえば当然、普通な話で…。だからこそ、D×Pさんみたいに若いうちから若者が、ビジネスとは?キャリアとは?っていう問いに、身近に触れ、考えられていることは、とても大切だと思いますね。

 

今:そうですね。若いうちから自分のキャリアを築いていくことも重要なんですよ。子どもたち、若者たちの選択肢を広げるためにも、D×Pのスタッフはいろいろな職種の経験をしてきた人が合うんですよね。今は多様なバックグラウンドを持ったスタッフがたくさんいて、嬉しいですね。

 

「D×P図書館」は、社会との接点が無理なく生み出せる「場所」

 

松:先にもお話ししたとおり、弊社の会長も「図書館」をつくりたいと思っていて、ちょうどその時、今井さんもTwitterで「図書館」というキーワードを発信していらっしゃって。すごく共感して、すぐにダイレクトメッセージでコンタクトを取らせていただいて…。結局、初対面でこの図書館開設を決断してくださいましたよね。今井さんご自身の書籍もたくさん寄贈くださった。

 

今:そうそう。Twitterで出会って、実際に会長の市位さんと松本さんと会って「何か一緒にやれそうだな」って思ったので即決しましたね(笑)。

 

松:めちゃくちゃ早かったですよね。「えっ?」って声に出して驚いたの、今でも覚えています(笑)。そんなに早く決断していただけるとは思っていなかったので、電光石火のような今井さんのスピード感が印象的でした(笑)。なぜそんなにすぐ「JAMSTOREと一緒にやろう」って、ご判断いただけたのですか?

 

今:D×Pのオフィスにも子どもたちが結構来ているんですが「別の社会と接点が持てる場所」って、とても貴重だなって感じているんです。「好きな本を読める場所」ってだけでなく「違う社会の人と触れる場所」、その2つが合体したものが、ここJAMSTOREさんにあった。素直に「あ、ここだ!」と直感したんです。

 

松:なるほど。制作事務所にある図書館ですもんね。

 

今:そうそう。しかも、JAMSTOREさんは制作事務所である上に、同じビルの1階と2階には別会社が運営するクリアケースの製造工場(http://www.yodoshiki.com/)もあって。その作業現場を通って入れる場所に図書館がある。ここなら高校生たちが自分とは違う社会の人と、気軽に、そして無理なく出会える。「社会」「図書館」「通える場所」が全部セットになっていて、子どもたちにとって本当にいい「場所」になるはずです。

松:セットになっている、いろいろと揃っているっていうのは、若者たちにとって大事なことなんですね。

 

今:大事ですね。今の子たちって「ゲームが好き」とか「アートが好き」とか、自分の「好き」をベースに社会との接点を持っている子が多いんです。それが「D×P図書館」だったら「本が好き」にプラスして、必ずいろいろな人と会えるキッカケがある。今まで接点が無かった中小企業のものづくり現場も見られる。自分が「好きなこと以外」の社会とのつながりが、無理せず偶然に生まれる。そういう環境って最高じゃないですか。

 

松:そうですね。以前ある方にこう言われたことがあって。

「子どもたちのために、大人が『これがいいだろう。これ勉強になるよ』って与えても、意外とそれは大人が<教えたい>だけで。与えるだけじゃなくて、子どもたちに<選ばせる>ことが大切なんですよね」と。その話を思い出しました。

最初のキッカケは本が好き、という他愛もない事実なんだけど、そのおかげで彼らは人生を一歩踏み出していく。「あ、こんな生き方もあるんだ」と気付いてもらえるはず。それはきっと、彼らの中に選択肢を増やすことになる。無理やり与えるより、自分で選べる環境ってとても大事だよなって、改めて思いました。

 

今:そうですね。閉じた世界に自分を置いている子も多いんですよ。そんな子たちが「社会」「図書館」「通える場所」がセットされた「D×P図書館」に来ることで、偶然に出会い、社会との接点を持つって面白いなと期待しています。

 

「自己責任」で片付けないために。誰にとってもやさしい図書館にしていきたい。

 

松:少し話は変わるんですが、以前拝見したインタビュー記事(https://www.huffingtonpost.jp/2016/12/29/imai-noriaki_n_13878088.html「自己責任の一言で終わらせない」っておっしゃっていたのがとても印象的でした。今まで聞いたことのないワードだったので、とても心に響いて。その思いがD×Pさんを立ち上げた背景におありで、ひいてはこの図書館オープンにもにつながっているんですよね。

 

今:そうですね。10代で不登校の子たちって、しんどい家庭の子ほど孤立しているんですよ。その状態から、自分の力だけで、誰にも助けも求めず自立するって、結構不可能に近いものがある。全体の5~10%くらいのよっぽど行動力のある子たちしか、自力では抜け出せないと思うんですよ。むしろ抜け出せないのが当たり前。だからこそ僕らが彼らをサポートする側に回れたらな、と思いながらD×Pの活動は続けています。

<認定NPO法人 D×P 公式WEBサイト>

 

 

松:若者が孤立から抜け出すサポートや教育をしている学校って、ほぼ無いに等しいですもんね。頼れる大人もいなくて孤独なのに、18歳になったっていうただそれだけの理由で「はい、じゃあこれからは自己責任ってことで、社会で生きていってね」って言われると…。さすがに無理があるな、と。改めて私も気付かされました。今回オープンする「D×P図書館」が、彼らにとって新しい選択肢になれると嬉しいですね。

 

今:そうなんです。不登校状態とか高校を中退した若者に「自分で何とかしろよ」って、それはやっぱりなかなか厳しすぎる現実ですから。

今回、新しくできる「D×P図書館」に、まずは不登校の子や通信制高校に通っている子、近くにある定時制高校の子たちが気軽に通ってくれるようになったら嬉しい。
そして近い将来は、大人たちも交えてイベントなんかもやってみたいなって考えています。若者も、大人も、ひいては幼い子どもたちも来るようになれば、さらに面白いだろうな、って。「D×P図書館」が地域に根差した、開かれた「場所」になってくれたらいいですね。

 松:いいですね!これからもこんな「場所」は、各方面につくっていきたいとお考えですか?

今:そうですね。ご縁があるなら場所づくりは加速していきたいです。今回の図書館のような「集まれる場所」だったり、あるいは「住む場所」だったり、いろいろなカタチがありますが、物件を持っている方と、ぜひ一緒にコラボできたらなと。そのためにも、まずはこの「D×P図書館」から盛り上げていきたいですね。

松:私も「D×P図書館」がどんな「場所」になるか、想像するだけでワクワクしています。これからもよろしくお願いします。本日はありがとうございました!

 

※インタビュアー|JAMSTORE松本